新発見 東かがわ市・さぬき市の歴史6 ~海女の墓石造物群の謎解き③ 2基の経塔(きょうとう)~

経塔は海女の墓と伝わる中央の五輪塔の前面左右に2基1対であります。この塔は海女の息子である藤原房前が海女の供養のために法華経を奉納した塔と伝わっており、経塔は2基ともに円柱形で内部は空洞で納入施設になっています。塔には伝承どおり経典が奉納されていたと思われますが、問題は藤原房前が奉納したという点です。経典を石塔や石塔下の土中に奉納する風習は平安時代後期の12世紀頃に日本各地で流行しており、奈良時代の人物である藤原房前とは年代が合わないのです。おそらく2基の経塔には12世紀頃に経典が奉納され、後に藤原房前の話が付け加えられたと思われます。12世紀頃といえば、志度寺が「志度の道場」として文献に初めて登場する時期であり、経塔は志度寺の歴史において重要な塔であったと思われます。

絵図、古写真からは2基の経塔は後世に度重なる整理が行われていることが分かります。現在、複数の部材が組まれていますがオリジナルは円柱形の塔身のみになります。また、海女の話の書かれている鎌倉時代頃に作成された『志度寺縁起』には精舎(しょうじゃ)(本堂か境内)の南東に約1町(約100m)を避けて安置するとあり、境内の北西部にある現在とは場所が異なっています。経塔は時代の趨勢の中でさまざまな変化を経ながらも大切に整備されて現在に伝わっています。

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